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国際共同開発する防衛装備品の第三国輸出解禁を巡り、自民、公明両党が2月中の合意を断念した。次期戦闘機を念頭に置いた与党協議で、政府は月内の決着を求めていたが、結論を先送りした。
公明が、政府側の説明が十分ではないとして慎重姿勢を崩さないのが最大の理由だ。殺傷力の有無にかかわらず、国際共同開発する防衛装備品の第三国輸出は日本の守りにも資する。それを理解しない公明の姿勢は問題で、先送りは残念だ。公明は早期に容認に転じてもらいたい。
懸念されるのは、公明が「一国平和主義」の残滓(ざんし)にとらわれている点だ。日本だけを守れればよい、日本だけが平和であればよいという一国平和主義は、同盟国や同志国とともに抑止力を向上させて平和を守る努力を妨げる。現代日本に戦乱や危機を呼び込みかねない反平和主義の一種ともいえる。
「平和の党」を掲げているように、公明が真剣に平和を願っていることは分かる。日本の守りのために次期戦闘機の国際共同開発も容認した。
だが、第三国輸出の意義を理解せず慎重姿勢を崩さないのであれば、平和追求の方法が間違っている。責任ある与党であり続けたいなら、平和を守る手立てを履き違えてはならない。「積極的平和主義」による平和の追求が必要な時代になった点を理解すべきだ。
日英伊3カ国が共同開発する次期戦闘機の第三国輸出を日本が拒めば数兆円かかる開発コストの低減幅が縮む。価格上昇で英伊両国にも迷惑をかける。
日本には経済力の伸長著しい東南アジアなどへの輸出が期待されている。日本が見送ると英伊両国がカバーすることは難しく、中国製やロシア製の戦闘機が東南アジア各国で採用されていく恐れもある。この地域と中露の接近が進みかねない。
法の支配など基本的価値観を共有する友好国に、日本が戦闘機など軍の主要装備を輸出できれば、同志国への格上げを図れる。東南アジアの民主主義国家などを、専制国家の覇権主義に対抗する抑止力向上の環(わ)に加えられれば、日本の安全保障環境の改善にも大きく寄与する。
このような広い視野に立って防衛装備品の輸出を容認するのが、積極的平和主義、現実的平和主義の道である。
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2024年2月29日付産経新聞【主張】を転載しています